CCCのユニクロ宛手紙(2017年11月1日)

新田幸宏様
グループ上席副社長
サステナビリティー担当
ファーストリテイリング社

201711月1日

ジャバ・ガーミンド労働者に支払われるべき未払い退職手当について

新田幸宏様

私たちの書簡に対するお返事を2017912日に受け取りました。ありがとうございました。

ユニクロが①取引中止に先立って工場に通告を出していること、②ジャバ・ガーミンドの主要なバイヤーではないことを根拠にジャバ・ガーミンド労働者の権利への責任を否定していることを、私たちは理解しました。しかしながら、私たちがなぜこのユニクロの見解に同意できず、ユニクロに未払い退職手当問題の解決に向けて迅速な行動を求め続けているのか、以下に説明したいと思います。

第一に、取引中止に先立ってユニクロとジャバ・ガーミンドのオーナーとの間で何が話し合われたかを知ることは、私たちにはもちろんできません。しかしながら、ユニクロが、チプカ工場のいずれの労働組合にも、生産の質に関する懸念、あるいは取引中止の意向を伝える努力を払わなかったことを、私たちは知っています。

ブランド企業が生産委託工場から責任をもって撤退するにあたっては、取引中止の可能性、理由、時期について、契約の不更新に先立って、経営側だけでなく労働者側にも伝えることが不可欠です。労働者側に伝えることで、a)労働者自身が将来の注文を維持するために何が必要なのか気づき、注文を維持する可能性を交渉できること、b)労働組合が、会社の閉鎖に際して退職手当の支払保証を含む正しい法的手続きの遵守をチェックできることを保証できるのです。

もしユニクロが取引中止をめぐる交渉に労働組合を関与させていたならば、労働組合の代表は工場閉鎖に先立って退職手当支払違反を食い止める行動をとることができ、労働者は現在のような境遇に追い込まれることはなかったでしょう。

この基本的にしてきわめて簡単な措置を怠ったことは、ユニクロが撤退に際してジャバ・ガーミンド労働者の権利を守るために必要なデューデリジャンスの義務を果たさなかったことを意味します。ユニクロはこの怠慢をつぐなうために、未払い退職手当の直接支払いも含め労働者の法的権利が保証されるように、その力を行使しなければなりません。

第二に、労働者の報告によれば、ユニクロは小規模なバイヤーなどではありませんでした。労働者の証言によれば、工場閉鎖の頃まで労働者は、ユニクロ製品の製造に多くの労働時間を費やしていたといいます。

ユニクロからの生産委託があって以降、働き方に目立った変化が生まれたという労働者の証言は記すに値すべきでしょう。ユニクロは工場内の生産方法と組織に直接に影響を与えることができたという証言は、ユニクロがジャバ・ガーミンド社に対して重大な影響力を行使したことを示しています。この影響力は、ユニクロのこの産業における立場およびその注文量の大きさからくるものであって、ユニクロのジャバ・ガーミンド経営者への影響力は工場閉鎖のころまで重大なものだったことを明らかにしています。

 ビジネスと人権に関する国連指導原則は、企業はサプライチェーン労働者の権利擁護のためにできるかぎりの影響力を行使しなければならないと述べています。この影響力は企業が発注する生産の割合に単純に限定されるものではなく、企業の全体的な影響力と規模を含む様々な要素をも考慮に入れなければならないと述べています。それゆえ、ユニクロが、ジャバ・ガーミンド労働者への責任を回避するために、証拠も示さず生産量の割合を引き合いに出してきても、それで十分とはなりません。

最後に、ユニクロは、取引中止は工場閉鎖に何の影響も与えなかったと主張していますが、それは工場の現実に合っていません。すなわち、ジャバ・ガーミンドはユニクロが取引から撤退して数週間後に倒産したのです。ユニクロのジャバ・ガーミンドからの撤退が会社倒産の唯一の原因ではなかったかもしれませんが、工場閉鎖の重要な要因であったことは否定できないでしょう。

労働者に支払われるべきお金は、ユニクロの製品を生産していた期間を含めて労働者の労働全体を通して生み出されたものです。したがって、労働者に帰属すべきお金が支払われないとすれば、賃金泥棒に等しいことになります。会社倒産に際して労働者に支払われるべき賃金の確保はジャバ・ガーミンド社の義務としても、ユニクロが、ジャバ・ガーミンド社がこの資金の用意をしていることを確認しなかったのは、責任あるバイヤーとしての義務を怠ったと考えます。この義務とは、ユニクロは最終的に撤退することを決め、そのことにより労働力の一部削減の可能性があることを認識すべきだったということです。このようなケースにおいて退職手当の不払いがおきることは広く知られているので、ユニクロは撤退準備をするあいだに考慮すべきでした。それ故、私たちは、ユニクロは労働者に支払うべき退職手当を支払っていない会社の責任を共有すべきだと考えています。

以上の理由により、私たちは、ユニクロがジャバ・ガーミンド労働者全体に保証する責任と資金を有していると考え、これら労働者に支払われるべき550万ドルの速やかな支払が保証されるように、ユニクロに要求を続けていきます。

最後に、私たちはユニクロが元ジャバ・ガーミンド労働者の雇用を支援する方法を探しているというあなたの手紙に注目していますが、この提案については懸念をもっています。

労働組合との話し合いの後、私たちは、労働者自身はそのような努力の結果について懐疑的であることに気づきました。縫製産業の雇用主は若年労働者のみを雇用する悪評があり、多くが中年になった元ジャバ・ガーミンド労働者を雇用したいとは考えないでしょう。また、ジャバ・ガーミンドがチプカ地域でほとんど生産していないので、再雇用計画では労働者に自宅から遠く離れた地域への移動を必要とし、大部分の労働者はそうすることができない、という懸念もあります。もちろん、ジャバ・ガーミンドでの経験を経て、労働者たちが法的権利を尊重しない雇用主やブランドのために働きたくないことは、当然のことでしょう。

しかしながら、仮にユニクロが再雇用を支援し、労働者がその申し出に応じたとしても、この行為は、ジャバ・ガーミンド労働者に法的に支払われるべき退職手当が支払われないという現実問題の解決にはなっていません。要するに、再雇用に関するいかなる提案も、退職手当支払の努力と平行してのみなされうるのであり、退職手当に代替するものではありません。

ユニクロと親会社のファーストリテイリングは、世界最大級の小売業者の一つであり、さらに急成長すると公言しています。このことは、倫理的、道徳的にふるまい、事業をおこなうコミュニティを尊重する義務を伴います。ジャバ・ガーミンドの工場閉鎖は、コミュニティに壊滅的な打撃を与えましたが、ユニクロのような規模の会社にとって、問題解決のコストは取るに足りないものです。労働者たちは公正な解決を待ち続けています。

私たちはユニクロに直ちに行動を起こし、ジャバ・ガーミンド労働者のために正しいおこないをすることを強く求めます。

敬具

サマンサ・マハー クリーン・クローズ・キャンペーン(CCC)国際事務局

遠野はるひ 横浜アクションリサーチ

ラウラ・セレスナ-チャトベディ ドイツ緊急アピール

キキ・ヨン SACOM、クリーン・クローズ・キャンペーン東アジア(CCC-EA)代表

ツルシ・ナラヤナサミ War on Want

レナ・ラウ グローバリゼーション・モニター

ション・ソ レイバー・エデュケーション・サービス・ネットワーク

ヒュン-フィル・ナ コリアン・ハウス・インターナショナル・ソリダリティ

ジェイソン・チャン レイバー・アクション・チャイナ

ユク・ユク・チョイ ワーカーズ・エンパワーメント

バレリィ・ニコルス チャイナ・レイバー・ブルティン

 

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