ユニクロとJG(ジャバ・ガーミンド)労組の交渉決裂

JG労組は暗礁に乗り上げている争議の解決に向けて、ユニクロと第2回目の交渉をしようと10月初めに来日した。日本の支援者とともに行動し交渉実現を訴えたが、ユニクロは日本での交渉を拒否し、11月にジャカルタでの交渉を提案。11月14日、第2回交渉が、300人のジャバ・ガーミンドの労働者たちが見守る中、ILOジャカルタ事務所で行われた。しかしながら、交渉は平行線をたどりユニクロは今後の交渉をしないと宣言したという。

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JG労組とユニクロの交渉経過の説明が必要だろう。昨年、2017年7月4日、国際的キャンペーンの圧力により、ユニクロはジャカルダでの第1回目の交渉を受け入れた。交渉のテーブルでJG労組側は、ユニクロにもJG社の倒産に責任があるので退職金を支払ってほしいという主張をしたが、契約が終了した後のサプライチェーンに関しては責任がないとするユニクロ側からは具体的な提案はなく、交渉を継続するということで終わった。しばらくして、ユニクロから失業している労働者を近隣のサプライチェーン工場で再雇用をするという提案が書簡であり、この提案はウェブサイトでも公表された。

その後、組合側からの度重なる第2回目交渉の要請にもかかわらず、ユニクロからの返事がなかったのでCCC(クリーン・クローズ・キャンペーン)とJG労組はキャンペーンを再開した。2017年には署名キャンペーン、世界各地での抗議行動、2018年2月ロンドンのテイト美術館でのパフォーマンス、4月には70名のJG労働者による柳井社長宅への直筆手紙の送付、7月にはユニクロとスポンサー契約を結んだテニス選手、フェデラーへの手紙を世界各地から送りつけた。

しかしながら、ユニクロは委託を打ち切ったサプライチェーンの倒産には責任がないという従来の主張と再雇用提案を繰り返すのみ。思いあまったJG労組とCCCは、日本本社で直接交渉しようと10月7日から14日まで、JG労働者2人を含む6人で来日を決めた。来日に先立ちJG労組が9月20日付で交渉の申し入れ書を送付したところ、ユニクロからは日本ではなく11月にジャカルタで交渉をおこないたいという返信があった。

JG労組は第1回目交渉においてユニクロ側の責任者が不在のために何も決められなかったという苦い体験をしていたので、日本での交渉を実現しなければと日本の労働者・市民・若者の支援を受けて連日のように行動をおこなった。一連の抗議行動を考慮してか、10月10日ユニクロは11月の交渉に意思決定のできる幹部を派遣する、再雇用に加え他の支援方法についても話し合うと伝えてきた。

そして、11月14日午前10時からインドネシアILO事務所で第2回目交渉が行われた。第1回目の交渉から1年4ゕ月が過ぎていた。JG労組側からはテディ委員長、ワーニさんほか3名とCCCなどオブザーバー3名、ユニクロ側からはCSR担当の責任者である新田幸弘執行役員他3名と2人のオブザーバーが出席。JG労組は、元JG労働者の退職金支払いのために人道的な基金を創設しユニクロに資金を提供することを迫ったが、ユニクロはこの提案を拒否し具体的内容について提示のない再雇用提案を繰り返すだけで、次回の交渉も拒否したのだった。

CCCは、11月29日に山口県の本社でおこなわれたファーストリティリングの株主総会の2週間前にビデオ「ブレークスル―」を、前日の28日はCCCのウェブサイトで声明を発表した(声明の日本語訳 → PDF)。

2011年に制定された「国連ビジネスと人権に指導原則」でサプライチェーンにおける人権尊重が明記されて以後、G7、G20などで「責任あるサプライチェーン」問題がとりあげられてきた。ユニクロ(ファーストリテイリング)においても、自社のCSR(企業の社会的責任)の6つの重要課題のうち、「サプライチェーンの人権・労働環境の尊重」が「商品と販売を通じた新たな価値創造」に続く、第2番目の重要課題として位置付けられている。ユニクロがサプライチェーンにおける人権尊重に真摯に取り組んでいくと考えるのならば、まず国際基準に沿ってJG争議を解決すべきであろう。

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