インドネシアから70通の手紙が柳井社長に送られる

ユニクロのサプライチェーン、ジャバ・ガーミンド労働者が窮状を訴える

 

2018年4月22日は、ユニクロのサプライチェーン、ジャバ・ガーミンド社が倒産して3年目にあたる。労働者たちが受け取るべき賃金・退職金など総額550万ドルは、現在まで支払われていない。労働者たちは、注文をストップすることが倒産の引き金となったので、ユニクロにも支払い責任があると考え、柳井社長の自宅に手書きの手紙を、4月16日にインドネシアから郵送した。70通の手紙は、倒産記念日の4月22日にジャバ・ガーミンド労組(SPAI-FSPMI)のテディ委員長の書簡とともに、ファーストリテイリング社へメールでも送られている。

70通の手紙は日本語訳されていて下記のリンクから読むことができる。

https://drive.google.com/open?id=1wXz8-n2IpKod6EwD_l4yVeGA6OTxoEBc

労働者たちは、他のブランドに比較してユニクロの製品の品質と納期がきわめて厳しいこと、休日返上、12時間の長時間労働はしばしばおきていたこと、20年以上も働いていた職場を失い高年齢のために再就職先をみつけることが困難なこと、子どもの学費を払えず学校をやめさせたこと、住む家を失ったことなどなどを訴えている。

2018年1月18日、ユニクロの親会社、ファーストリテイリングは、ジャバ・ガーミンドのケースについて声明を発表した。

http://www.fastretailing.com/jp/sustainability/news/1801180900.html

4月22日に送られたテディ委員長の書簡はこの声明への反論である。主要な部分を紹介したい。


柳井 正 様

(略)

(2018年1月18日の)声明に対して、ユニクロのサプライヤー、ジャバ・ガーミンド労働者であった私たちは、現実に依拠して事実を明らかにすべきであると思いました。

第1に、この声明の中で述べられている「弊社は、2012年10月から2014年10月までの間、PT Jaba Garmindo社にユニクロの一部商品の生産を委託していましたが、取引期間中に継続的な品質問題と納期の遅延が発生したため、2014年初頭に同社に対し問題の解決を促しました。その後も、問題が解決されなかったため・・・」に関していえば、私たち労働者は要求された注文数と品質を仕上げるために最大限の職責をはたしました。私たちは、ユニクロが労働条件を改善するという主要な問題を解決することなく、ただ「切り捨て逃げる」不公正な行動をとったのだと考えています。「切り捨て逃げる」というユニクロの行動により、ジャバ・ガーミンド社は経営難におちいり、最終的には倒産してしまいました。その結果、何千人もの労働者は、生きるために必要な十分な賃金と退職金を手にすることなく、解雇されたのです。

第2に、ユニクロはいつもこのように言います。「PT Jaba Garmindo社の倒産に関して、弊社には法的責任はなく、同社の倒産によって失職した元従業員へ金銭補償を行なう合理的理由はありません。」実際、多国籍企業としてのユニクロの声明は人権を尊重せず、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)を否定しています。指導原則には、企業には「たとえその影響を助長しない場合であっても」、「人権への負の影響を防止または軽減するように努める」義務があることが記載されています。UNGPsは、直接的な労働雇用関係があることが必要だといっているのではないのです。指導原則は、バイヤーとサプライヤーとして事業、製品またはサービスとつながっている会社について語っています。私たちは、ユニクロの製品を生産していた労働者として、ユニクロのサプライチェーンの一部であり、サプライチェーンでおきた労働権の侵害については、ユニクロ、あるいはそのオーナーに責任をもとめたいと考えます。柳井正氏はいつも社会における人間の価値を奨励しているからです。

第3に、声明は「失職した同社の元従業員の救済措置として、再雇用促進に関する支援の提供を労働組合に対して提案しております」と記しています。ユニクロは本当にこのようなことをしたのでしょうか?私たち労働者は、この提案に関してユニクロと仔細に話し合ったことがありません。最後にこの提案はメールでされており、私たちはこのメールに返信しましたが、その後、ユニクロとのコミュニケーションはありません。ユニクロは私たちの最後のメールに回答をしていないのです。そして、今回ウェブサイトで支援の申し出をしたと記載してあったので驚きました。ジャバ・ガーミンド労働者は当惑し傷ついています。これは公開で発表された嘘であり、ユニクロはジャバ・ガーミンドのケースの解決に関して不透明な対処をしていると考えます。

私たちはユニクロのウェブサイトhttps://www.uniqlo.com/uk/en/company/csr.htmlを見て、ユニクロが若者、難民、被災者、環境などに関心を寄せ、サポートしていることを知りました。正直なところ、このことは皮肉なことだと感じます。今、ユニクロ製品を生産していた2000人の労働者の多くは、授業料を支払えないために学校をやめなくてはならなくなった子どもたちがいて、また、賃料を支払うことができないために住居がなく「難民」になっている労働者も何百人もいます。2000所帯が主たる収入を失い、仕事を失い、家を失い、適切な健康サービスを失いました。私たちユニクロの労働者からは、このような悲惨な状況をユニクロがいつまで継続させるのかという、疑問がでています。そして、不幸なことにこうしたことが起きているのは、労働者の権利を尊重し福祉の促進を公言しているユニクロの労働者、私たちなのです。(略)

ジャバ・ガーミンド労組(SPAI-FSPMI)委員長

テディ・セナディ・プトラ


ジャバ・ガーミンドの労働者は、ユニクロから返信を受け取り、交渉のテーブルにつくことを望んでいる。

また、ジャバ・ガーミンド労働者を支援しているCCC(クリーン・クローズ・キャンペーン)も4月19日に記者発表(英語・日本語)をおこない、ナイキやアディダスなど欧米の他のブランドの例をあげ、柳井社長が早急に行動をおこすことを要請している。

最後に労働者の手紙から引用しておこう。

「柳井正さん、私たちのつらい状態を何も見えないふりをしないでください。ユニクロの成功に貢献した何千人ものジャバ・ガーミンドの元労働者に対して、目と心をひらいてください。」